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アルデオD4エンジン、アイドル不調 (トヨタビスタ アルデオ)

不具合の症状
アイドリングしない。
アクセルをあおればなんとか回転はキープし、うまくアクセルを操作すれば走行可能。
不具合箇所の予想
アイドル制御されていないので、フェイルセーフモードになっている模様。
アイドル制御系のトラブル?
配線の不具合あるいはセンサーの異常だといいけど・・・

普通にセルをまわしてもエンジンは始動しない。
アクセルをあおって何とか始動出来るが、アクセルを離すと、エンジンストップ。

アクセルをあおりながらなんとか工場までたどり着く。
中間の加速はそれほど悪くない感じなので、低回転域がおかしい?
アイドル制御系か?

とりあえず、ダイアグチェックしてみると、スロットルセンサーのコード出力。
スロットルセンサーがだめなのか?

アルデオ電子スロットル

よくよく見るとこのエンジン普通と違う。

トヨタの3S−FSEエンジン(D-4)と言う、シリンダーに燃料を直接噴射する超希薄燃焼(リーンバーン)の低燃費を狙った環境にやさしいエンジンだそうな!

シリンダーに直接燃料を噴射するので、高圧燃料ポンプを使用し、少ない燃料で超希薄燃焼させるために、高圧スワールインジェクター&スワールコントロールバルブなる物がお仕事をしておるそうな!

さらにスロットルバルブには、モーターが内蔵されている、電子制御スロットルが採用されておる。

このスロットルはおりこうさんで、ドライバーがアクセルを踏んだ分スロットルバルブを開くのではなく、コンピューター制御で運転状況に見合ったスロットルバルブ開度に自動調整してしまう優れものらしい。

アイドル制御は、ISCVのような、エアーをバイパスする方式ではなく、スロットルバルブで自動制御しているようだ。

うーんなんか難しそう!

スロットルセンサーのコードが出力されたので、スロットル廻りに原因があるのでは?

スロットルボディー廻りはかなり複雑で、「スロットルバルブ駆動用モーター」と「電磁クラッチ」「スロットルポジションセンサー」「アクセルポジションセンサー」から構成されています。

電磁クラッチは、もしシステムにトラブルが発生した場合、クラッチをOFFにして自動制御をキャンセルします。
この場合自動制御なしでも、最低限待避走行出来るように、普通のアクセルのように機械的にスロットルバルブを操作出来るようになります。

どうもこの状態になっているのでは?

スロットルボディーを外して点検してみるが悪そうな感じはしない。モーターも作動している。
もしやコンピューターがダメか?

でもやはりスロットルセンサーを交換する事にした。
あとプラグも交換してみる。

プラグを外すのに、サージタンクを外さないとならない!
もうちょい何とかならないの!と思いつつ外してみると、なんじゃこりゃ!

サージタンク内がカーボンだらけで詰まりそうじゃん。

カーボンと言っても、硬くこびり付いたものではなく、ぼそぼそしたススみたいなものが大量に堆積している。

これじゃ調子でないだろ!・・と掃除機を使用してぼそぼそを崩しながら吸い取りました。

プラグも新品に交換してエンジン始動!

エンジンかからず・・

変わってねーじゃねーか。
やっぱスロットルセンサーか?交換してエンジン始動!

いちようかかったが不調だ、しばらくアクセルを吹かしていたら、ん!なんか調子よくなった!

アイドリングも安定して、明らかに完調!
もしかして、学習機能か?突然調子よくなった感じがしたが?・・

その後まったく症状もでなくなり、走った感じもアイドリングも絶好調!
スロットルセンサーは関係なかったような気がするが・・・

決定的な原因が掴めないまま直ってしまった。
まあこんな事もあるのかな!

その後も入念にテストしたが至って快調なので、そのままお客様に納めた。

やれやれ・・・
と思ったのも束の間、数日後「路上でストップしてしまった」・・・と連絡あり。

やっぱ直ってなかったのか。

その場で、JAFを呼んで、近くのトヨタビスタに運ばれた。 うちの責任なので、ビスタまで積載車で引き取りに行った。

ビスタで応対してくれた方がメカニックだったので、これ幸いと状況を説明して原因はどこにありそうか質問してみた。

ビスタでも、同じような症状で入庫された台数はかなりあるみたいだ。
いままで入庫してきた車は、全部保障期間内だった為、無償修理したそうだ。

その際交換した部品は、「エンジンコンピューター」「スロットルボディーアッセンブリー」「高圧燃料ポンプ」「インジェクター全て」「スワールコントロールバルブ」「EGRバルブ」だそうだ。

怪しそうな部品は全部交換している事になる。しかも無償で!全部変えたら、30万はかかるのでは!

さすがトヨタ!クレームの修理は全ての部品を交換して万全を期しているようだ。
その為どの部品が不良なのかいちいち特定してないそうな。

ちなみにこの車、年式が新しいのに13万キロも走っています。当然、無償修理は無理!

「この年式で13万キロはすごいね!僕がもし一つだけ部品を換えるとしたら、スロットルアッシーかな、コンピューターやインジェクターは大丈夫じゃない!」とのお言葉を頂きました。

あとカーボンが大量に堆積していたのを説明すると、「このエンジンは通常のエンジンと違って、大量にEGRを行っているので、EGR用のサージタンクにススが溜まりやすい」と言っていた。

とても親切に詳しい説明を頂いた!

普通、うちのような工場にトヨタ車が入庫して、故障原因が分からない場合、デーラーの整備相談窓口で意見を聞けるのですが、ここまで詳細な情報を聞ける事はまずありません。
貴重なご意見ありがとうございました。

早速戻って、スロットルアッシーを注文した。

部品を交換して、いざ始動!
やった!かから・・ない。かからない!
直ってない!

まずい、これ以上金かけられない!
あとはコンピューターか?

とりあえず、もう一度システムをよく勉強し直した。

やはり故障の原因は、トヨタで交換している「エンジンコンピューター」「スロットルボディーアッセンブリー」「高圧燃料ポンプ」「インジェクター全て」「スワールコントロールバルブ」「EGRバルブ」のどれかしか考えられない。

エンジンコンピューターがあればテストしてみたいところだけど、そんなものない。
とりあえず「スワールコントロールバルブ」「EGRバルブ」を点検してみる。

「EGRバルブ」を外してみる。

このバルブは排気ガスをインテークに戻すバルブで、ISCVバルブにそっくり。
と言うかまったく同じ構造では!


う!!!!良く見るとバルブの部分になにやらごみが! 

小さな金属片だった。

もしやこのごみがバルブに詰まって開きっぱなしになってたのでは!

ごみを取り除いて、エンジン始動。ブルルルルーン!

あっさりかかってしまった。絶好調である

間違いなく直った感じ!!!

アルデオ電子スロットル

なんだよ、こんな単純な事だったのかよ!

手間かけやがって・・

・・・とゴミを良く見るとなんだか変な形だぞ!丸い穴がある金属片だった。


ん!これは見覚えがあるぞ!
パンチングメタルみたいな穴は、O2センサーの外側を覆っている遮熱板ではないか!

遮熱板が砕けて、破片がEGRバルブまで流れてきて引っかかったようだ。
アイドリングではEGRバルブは閉じているようで、破片が引っかかって開きっぱなしになるのでアイドルが保てなかったようだ。

だから最初、突然直ってしまったのは、破片がたまたまずれて取れたから正常になったと言う訳だ。

O2センサーは排気マニホールドに上から差し込まれているので、取り外してみると、パンチングメタルの遮熱板が全くなくなっていて、センサーの棒が剥き出しになっていた。

じゃあ他の破片は何処に行ってしまったの?・・

マニホールド内に残っている可能性が大きい!
と言うか残ってるだろう!このままだとまた詰まってしまう!

マニホールドを取り外して振ってみると、案の定「ガラガラ」と大量の破片が出てきた。

破片を全て取り除き、EGRバルブまでのパイプ内も掃除して、修理完了!

かなり苦戦した修理でしたが、原因が特定できてよかったです。

もし同じような症状で困っている方は参考にしてください。

エンジンが冷えている状態からエンジン始動して、すぐに排気マニホールドから「EGRバルブ」までのパイプが熱くなるようだったら、EGRバルブが開いてしまっていると言う事です。

アイドリング時はEGRバルブは閉じていないとアイドリングが不調になります