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1G-GTエンジンをオーバーホール前の圧縮漏れ点検

1G-GT圧縮もれ測定
エンジンを分解オーバーホールしていく過程で、シリンダーの圧縮漏れを測定し、オーバーホール後の変化も測定してみた。

圧縮漏れの点検には、通常コンプレッションゲージを使用します。

しかしコンプレッションゲージで、正確に圧縮圧力を計る事は出来ません。

ピストンが上がった瞬間に、下がってしまいますし、次に上がった時は、排気バルブが開いてしまいますので、コンプレッションゲージの針は、一定の値を指し ません。

実際に、コンプレッションを計ってみると、「圧縮圧力は、10キロくらい???」

・・・という感じで、6気筒も計るうちに、バッテリーが弱ってきて、ま すます「???」てな感じになってしまいます。

タイミングベルトが切れてバルブが曲がってしまった様な状態であれば、コンプレッションゲージでも圧縮のあるなしは判定できますが、微妙な気筒ごとの差はとらえられません。

そこで自作リークテスターで気筒ごとにリーク量を測定します。

そもそもシリンダー内は完全に密閉されていません。

ピストンリングの合い口などから常に空気が漏れています。

シリンダーに一定圧力をかけ、漏れ出た量を流量計で測定し良否判定するテストです。

シリンダーリークテスター

このリークテスターは、シリンダーに、プラグ穴から圧縮空気を送って、その空気がど れだけ漏れてしまうかを、計測する物です。

上死点付近のカムが作用してない(バルブが閉じている)状態の時、シリンダーに3.5キロの圧力をかけます。

完全に、漏れが無ければ、両方の針は3.5キロを指します。

シリンダーリークテスター

少しクランクを回して、

カムを作用させ、

ちょっとでもバルブが開けば、

あっという間に、青い針が下がってしまいます。

(空気が漏れるから)

シリンダーリークテスター

さらにクランクを回していくと、バルブが開き完全に青い針は「0」を指します。

この双方の針の差が、空気の「リーク量」という訳です。

リークテスターは市販されていますが、メーターが二つ付いているタイプしかなく、差圧を分かりやすくする為に、クラウンターボの「燃圧&ブースト圧」のテストに使用した、トラストの「ツインプレッシャーメーター」を装着しました。

シリンダーリークテスター1 0.30キロ

シリンダーリークテスター2 0.20 キロ

シリンダーリークテスター3 0.21キロ

シリンダーリークテスター4 0.25キロ

シリンダーリークテスター5 0.40キロ

シリンダーリークテスター6 0.31キロ


各シリンダーのリーク量は0.2〜0.4でした。

この、「リーク量0.2」とはどんな状態でしょうか?

常に、どこかから「シュー」と空気の抜ける音がしています。

「圧縮漏れしているではないか!」と思われるとおもいますが、実際には、圧縮漏れが完全に「0」にはなりません。

バルブシートカットをして、完全にバルブからの空気漏れが無くても、ピストンリングの合口の隙間もありますし、若干の空気漏れはあると思います。

燃焼により、温度が上がれば、クリアランスが狭くなり、気密性は上がります。

さらに爆発の圧力で、バルブは、よりバルブシートに押し付けられますし、ピストンリングも、ピストンと、シリンダー壁に押し付けられるように作用し、より気密性が上がります。

ちょうどゴルフの「インパクトの瞬間にグリップを締める」みたいな状態になっています。

もし圧縮漏れ「0」にしたら、ピストンは重くて動かなくなってしまうかもしれません。

なるべく軽く動いて、爆発の瞬間に気密性が上がれば良い訳です。

そしてこの「0.2」という数字は、かなり優秀な数字といえます。

おそらく「バルブ」や「バルブシート」の状態も悪くないと判断できると思います。

このテスト方法を使えば、エンジンを分解しなくても、内部の様子がある程度予想できます。

もっと細かく調べたければ、カムを外してしまい、リフターの頭を少し叩いて、一瞬バルブを開きます。

その後ごリーク量が変化するようなら、「バルブの当たりが悪い」と判断できると思いますし、変化が無く、リーク量が多いままなら「ピストンリングの摩耗」などが考えられます。

今後このテスターを使って、いろんなエンジンの「リーク量」を計測したいと思います。

例えばレース用のエンジンや、新車のエンジンなんかも、計測できたら良いと思います。

オーバーホール後も計測してみるつもりです。

 

つづく...

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